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Trinidad&Tobago

The birthplace of Steelpan

The land of origin of Handpans

 

1990年6月

 

トリニダード行きを決めてからは、資金調達の為に日々バイトに明け暮れた。

大学は休学していたので、3ヶ月余りで50万円を稼いだ。

さて、資金は出来たもののどうやってトリニダード行きの

チケットを買えばいいのか、当時はインターネットなどは普及しておらず、

手配してくれそうな格安航空会社もまばらな状況で、

カリブ海の小島への航空切符などは取り扱っていないのが現状でした。

 

そこで出向くのは図書館か本屋の旅コーナー。

中南米関係の旅行本を読み漁っていると、カリブ海への渡航ならここがオススメです、

という一行が目に留まった。ここに行くしかない! 

住所を見ると新橋と書いてある。

番地を確かめながら新橋の雑居ビル街を歩き回った。

えっここ!? 

そこはかなり古びていて怪しげな小さな5階建ビルだった。

入口の郵便受けを見ると、

その旅行社は最上階にあった。階段をせっせこ歩いて5Fに辿り着くと

安っぽいガラス張りの事務所があった。

ドアの前にしばらく佇んでいると、小太りで頭髪の薄い

中年男性が私に気づき、たどたどしい中国語訛りの日本語で”いらっしゃい”、

と私を手招きして出迎えた。

従業員は彼を含めて3人で内、一人はおばさんだった。

周囲の壁の上部には、なぜか海外青年協力隊からの

感謝状が多く掲げられている。

黒革がところどころ剥がれているソファに腰掛けると、

用件は?と小太りの男がタバコに火を点けながら問うた。

「トリニダード・トバゴに行きたいのですが、

トリニダードって知ってます?」と私が答えると、

即座にその男は反応した。

”トリニダードね、うちはそういう僻地が得意よ”

壁の感謝状といい、トリニダードが僻地扱いなところがなんか

腑に落ちなかったが、まあとにかくここしか他には無いだろうと

腹を括った。

 

どのくらいの期間滞在したいの? 

なるべく長く

そんなに長いチケットは発券できないよ。

どのくらいですか?

まあせいぜい1ヶ月くらいかな?

学校を休学してるんで、出来ればもっと長く居たいんですが。。

無理無理、うちでは、1ヶ月のFix(帰る日がきまっている)

チケットしか出せないよ。

 

どうしてもだめ?

はい、1ヶ月のFixだけね。

それじゃあ、仕方ないのかな、それでよろしくお願いします。

 

そう言うと、男は、おもむろにソファから立ち上がり、

事務机の電話機で誰かと中国語で話し始めた。

10分くらい待たされただろうか、ソファに戻ってくると

旅程図をコピー用紙に書きながら、こう私に説明した。

 

まずは、成田~ロサンゼルスね、これはマレーシア航空、

その後3時間待ってパンナムに乗り換えて

マイアミ、今度は5時間待ってBWIA(カリブ海の島々を行き来するローカル便)

に乗ってトリニダード。

チケット代は、1ヶ月Fixの往復で¥300,000-ね。

 

これは高いな、とは思ったが他にあてもないんだからと割り切り、

彼の言い値で現金を支払った。

それでも念願のチケットを手にした私は嬉しさで気分が高揚した。

浮足だった感覚で雑居ビルの階段を駆け降り、眩しい白昼の雑踏に出た。

 

(随時、加筆修正します)

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